はじめに
Mercedes-Benzのインフォテインメントシステム「MBUX」は、車とドライバーの関係性を変える革新のテクノロジーとして注目されてきました。そして、2024年後半から配信が始まった「MBUX 2.6.1」は、その真価をさらに引き上げる大型アップデートです。
このバージョンでは、音楽体験を革新する「Sound Drive」や「Amazon Music」の進化、CarPlayナビ表示の強化、EV向けルート案内の最適化、そして共有ナビゲーション機能の追加など、あらゆる側面で“使いやすさ”と“楽しさ”が向上しています。
今回の記事では、それらの新機能について、筆者のGLC220d(X254)での実体験も交えて、詳しく解説していきたいと思います。
Sound Driveモード ― 音楽と走行がシンクロする次世代体験
Sound Driveは、MBUX 2.6.1の中でも最も注目される機能の一つです。2023年にラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)で、アーティストのwill.i.amとの共同開発により発表され、ようやく実装されました。
この機能は、ドライバーの走行操作と連動して音楽の演出が変化するという、まったく新しい音楽体験を提供します。例えば、加速すると音が盛り上がり、停止時にはトーンが抑えられる。ステアリング操作やG加速度に応じて、シンセサイザーの音色や効果音が自然に変化していく仕組みです。
現在は約40曲の洋楽がSound Driveに対応しており、それぞれの曲は個別にダウンロードが必要です。ダウンロードにはスマートフォンのテザリングや車載Wi-Fiが必要で、通信速度によっては1曲あたり数分〜十数分かかる場合があります。
私のGLC220d(X254)でもこの機能は問題なく利用可能でしたが、すべての楽曲を試すにはかなりの時間がダウンロードに必要です(とにかく遅い!!)。本格的なレビューは、後日あらためて別記事にて詳しくご紹介したいと思います。
Amazon MusicがDolby Atmosに対応 ― 高音質再生で車内がライブ空間に
音楽ストリーミングの定番「Amazon Music」が、MBUX 2.6.1からついにDolby Atmos再生に対応しました。これにより、対応車両では“空間オーディオ”による立体的な音楽体験が可能になります。
従来からApple MusicやSpotify、Tidalなどのサービスは統合されていましたが、Amazon Musicの本格的な進化は今回が初めて。Mercedes meアカウントとAmazonアカウントを連携させることで、車内でのAmazon Musicの利用がより快適になり、楽曲の選択や音声操作(Alexa)との統合もスムーズです。
Dolby Atmosによる再生では、従来のステレオ再生では感じられなかった空間的広がりや臨場感を実現し、まさに“車内がライブ会場”のような没入感が楽しめます。
CarPlayナビの情報表示が進化 ― ETAや残距離の可視化
Apple CarPlay利用時のナビ表示も強化されました。今回のアップデートにより、ナビゲーション中に「ETA(Estimated Time of Arrival:到着予定時刻)」と「残走行可能距離」が明確に表示されるようになりました。
これにより、Apple Mapsを利用していても車両のディスプレイ上で必要な情報が瞬時に確認できるようになり、スマホ画面を見る機会を減らすことができます。長距離ドライブや混雑時の走行計画が立てやすくなり、安全運転にもつながるでしょう。
共有ナビ(Shared Navigation)でリアルタイム位置共有が可能に
新たに実装された「Shared Navigation」機能では、目的地へのルートや現在地を、選択した連絡先とリアルタイムで共有できるようになりました。
使い方は非常にシンプル。Mercedes独自のナビシステムを使用して目的地を設定した後、「共有」ボタンをタップし、送信先を選ぶだけ。SMSなどを通じてリンクを送信すれば、相手はスマホやPCで車両の位置と移動経路をリアルタイムで確認できます。
この機能はApple MapsやGoogle Mapsなどの外部ナビアプリでは使えず、MBUX純正ナビ限定の機能です。家族や友人との待ち合わせ、子どもの送迎時など、安心感と利便性が大きく向上します。
EV・PHEV向けルート案内がよりスマートに
EV・PHEVオーナーにとって嬉しい改良も含まれています。MBUX 2.6.1では、従来の「Mercedes me Charge」(現在はMB Charge)に基づくルート案内機能が強化され、より正確で実用的な充電ポイントの案内が行われるようになりました。
例えば、目的地に到達するまでに必要な充電回数、最寄りの急速充電ステーション、ルート上の渋滞状況などをもとに、AIがリアルタイムで最適な経路を提示してくれます。筆者はEVではないため未検証ですが、既存の機能でも非常に評価が高かっただけに、さらに進化している可能性は高いでしょう。
Garminスマートウォッチ連携で“心の状態”を可視化
Garmin Vivosmart 3などの対応スマートウォッチを持っているユーザーは、MBUXと連携してストレスレベルやバイタル情報を車両ディスプレイ上に表示することができます。
この機能「Energizing Coach」は、走行中の心拍数やストレスを可視化し、ドライバーの体調に応じたアドバイスや音楽演出を提供してくれるというもの。Apple Watchには現時点で対応していないのがやや残念ですが、対応機器を持っている方には興味深い機能でしょう。
内蔵Webブラウザの高速化とマルチメディアの進化
MBUXの車載ブラウザも、ページ表示速度が向上し、より快適に利用できるようになりました。YouTubeや映画視聴に使う際の読み込みがスムーズになり、EV車両で充電中の“すきま時間”に動画を楽しむという使い方にも最適です。(ていうか今までが遅すぎて使い物にならなかったです…)
特に大画面ディスプレイ搭載モデルでは、映画視聴との親和性も高く、今後の車内エンタメ体験の拡張が期待されます。
不明点もあるが、確実に軽快になったレスポンス
アップデート内容には「一般的なバグ修正と改善」も含まれており、詳細は公開されていませんが、実際に操作していると反応の軽快さやメニュー遷移の速さが向上していると感じます。
目立った不具合の報告も少なく、安定性も高いアップデートといえるでしょう。
アップデート確認手順
MBUXのバージョンを確認するには、以下の手順を踏みます。
- MBUXホーム画面から「設定」へ移動
- 「システム」→「ソフトウェア更新」へ進む
- 「2.6.1」と表示されていれば最新状態
OTA配信は段階的に行われるため、まだ更新されていない場合は数日〜数週間待ってみるのがよいでしょう。
私の場合は2025年6月14日、エンジンを停止した直後にナビ画面にこのアップデートの案内が表示されました。画面表示に従い、車のドアを開けてキーでロックすると、自動的にインストールが始まります。作業時間はおよそ10分ほどでした。
まとめ:MBUX 2.6.1 アップデートでできるようになったこと
- Sound Driveモードの実装(走行と音楽が連動)
- Amazon MusicのDolby Atmos再生に対応
- Apple CarPlayでのETA(到着予想時刻)と残距離表示の追加
- MBUX純正ナビを使ったリアルタイム位置共有(Shared Navigation)
- EV/PHEV向けの充電ステーション含むルート案内の高度化
- Garminスマートウォッチ連携によるストレスレベル表示(Energizing Coach)
- 内蔵Webブラウザの読み込み速度向上
- システム全体のレスポンス・安定性の向上
MBUX 2.6.1は、派手な見た目の変更はないものの、実際の体験を大きく変えてくれる“静かな革命”ともいえるアップデートです。
私のGLC220d(X254)でもSound DriveやAmazon Music Dolby Atmosなど、次世代の機能を体感できました。特にSound Driveは音楽と走りが融合する驚きの体験であり、今後のアップデートや楽曲拡充にも大きな期待が持てます。これについては次回レビューしたいと思います。
まずは自車のMBUXが対応しているかを確認し、この進化をぜひ体感してみてください。
コメント